2005年12月24日土曜日

発電機は使う量しか発電しない

大雪で送電線トラブルがあった.
送電線がだめになれば,普通はバックアップの系統を使って送電するが,こんなに狭いところだったので,バックアップ系統も同じような場所を通り,どちらも大雪でだめになった.

つまり,発電所の電力は,まったく送電されなくなった.
ここでこんな質問を受けた.
「原発で発生している電気はどこにいっているの?」

これの回答が,「発電機は使う量しか発電しない」である.>過去に書いた記事
どんな発電機もそうである.電気は余らない.

発電機からの電線が切れるとどうなるか.
今まで力を加えていた発電機が,「空転状態」になる.つまり回転させるのに力が不要になる.

馬力とトルクの関係に書いたとおり,74kW のモーター出力とは回転数が毎分8000回転なら 88.33 N・m (9.0kgf・m)のトルクを加えたときであるから,逆に74kWを発電している発電機が毎分8000回で回転しているときは,88.33N・mのトルクが加えられている.
88.33N・m=9.0kgf・mであるから,半径1mの滑車に9kgの錘を下げて,回転数が毎分8000回で巻き上げている状態である.

関西電力は60Hzなので,毎秒60回転(回転数は毎分3600回)である.
電力需要が1000Wなら,2.65N・m のトルクで回せばよい.>換算式
ここで誰かが,800Wのドライヤーの電源を入れたら,発電機に負荷がかかり,回転が落ち始めるが,回転を維持するには,1800Wの電力需要に対応して蒸気圧を上げ,1.8倍の 4.77N・mのトルクを加えればよいし,誰かが電源をオフにして電力需要が500Wになればトルクを1.33N・mに下げるだけである.
つまり,家庭での節電は,そのまま瞬時に発電所全体のトルク減=蒸気圧減=燃料節約につながる.

電線が切れれば,電力需要は0,発電に要する回転トルクも0.毎分3600回の回転数を維持するために必要なトルクは,機械的な回転抵抗に対応したものになる.
(したがって,ほかの発電所の発電量がその分増えることになる.)
このように,「今消費している分の電力だけを発電している」のが発電機である.電気は余らない.

大飯発電所の3号機が118万kWを発電しているときの回転トルクは3130046N・m=319392kgf・m
半径1mの滑車に319トンの錘を吊り下げて,毎分3600回の回転数で巻き上げることと同じである.
送電線が切れるというのは,負荷がなくなるということで,吊り下げた錘がなくなる状態である.
発電機は一気に蒸気圧を下げ,安全のために自動停止してしまう.

電気は余らないが,原子炉は簡単に止められない.つまりお湯を沸かし続ける.
余るのは電気ではなく,熱エネルギーである.冷却水を通じて海水を温め続ける.

したがって,急激な電力変動に最も無駄なく対応できるのは水力.弁の開閉でトルクを調節するが,弁を閉じれば水流は無くなり,水の位置エネルギーの無駄はない.
次に火を消すだけの火力.火が消えるまでにそれなりの時間がかかるし、それまで温めたお湯の熱エネルギーは冷却水を通じて海水を温めるので,そのエネルギーが水力よりは無駄である.

このように,発電機は一定量を発電し続けるのが効率がよいわけだが,昼夜の需要変動があり,なかなかうまいこといかない.発電能力は盛夏の13時~15時に対応できるように電源開発するが,電力変動が大きすぎると熱エネルギーなどが無駄になるため,電力会社では夜間電力の利用促進をする.

ここでふと,「電気が余る」という誤解を生む原因が,電力会社の広告にあるのではないかと思い至った.
「余った夜間電力を使って」という言い回しである.正しくは「余った発電能力」だろう.まぁ,一般人にとってはどちらでもいいことだが.
発電機は使う量しか発電していない,というよりそれしか発電できない.電力が余るのではなく発電能力が余り,電力変動が大きいと無駄になるのは電力ではなく,熱エネルギーや,盛夏の13時のために用意した使われない設備である.
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2 件のコメント:

  1. あなたのブログは実に面白くためになる。 以前周波数を合わせる事について5人乗り自転車で説明が書いてあったが、100%疑問が解けなかった。交流の波形には位相がある。二つの発電機が同じ回転でも位相が同じとは限らない。 位相がずれると、プラスマイナスがぶつかり電力は0になる?
    位相は合わせなくてもよいのだろうか? 太陽光発電でインヴァーターでの周波数合わせは簡単だが位相を合わせるのは困難な仕事だと思うが、貴殿の面白いたとえによる明快な答えが聞きたい。

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  2. >位相を合わせるのは困難な仕事

    困難ではない.簡単に位相は合う.
    細かい例外的なことは無視し原理的なことだけを考えると,発電機は勝手に同期する.

    止まっている発電機を既にある交流の系統につなぐと,系統の電力使いモーターとなって空転を始める.
    回転が安定したら,系統の交流と同じ位相となった証拠.

    ここで回転軸にブレーキをかけても,摩擦熱の熱エネルギーとなるだけ.(その分他の発電所の発電量が増える.)
    回転力を加えても,位相は進まず,電力となるだけ.(それは5人乗り自転車の例えのとおり.)

    細かいことを言えば,最初にある程度回転数を合わせた方が良いことは確か.
    モーターは位相の合っていない起動時ほど,電力消費が大きく負担が大きいから,大きな発電機ほど先に回転を上げておくべき.
    で,系統につないだ時に位相が進んでいれば,位相が合うまでブレーキがかかり(エネルギーは電線を伝わって他の負荷で消費),位相が遅れていれば加速(電線から電力もらい自分が負荷となる)する.

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